「アッ」という間に日本は、世界に先がけて超高齢時代に突入しました。
30年前に治療させていただいた患者さんが、今や元気な95歳!「人生100年」時代の到来です。
最終回は、「自分の歯で食べる」・「自分の歯で噛む」を論題に、自分の歯を失った人が、『ちゃんと噛める総義歯』で
「食べる」そして「噛む」ことで、人の生活や健康長寿にどの程度影響しているのか、コホート調査や基礎研究文献を紹介し、
私の「所見」を述べて終わりにいたします。


◆コホート調査・基礎研究論文(国内の調査や論文の特別寄稿文を抜粋)______________________________
歯科保健医療に光と影をつくってはいけない
~義歯で機能回復のためのリマウント調整の理解に向けて~
高齢者の口腔ケアはできるが、義歯は作れないという現実を真正面から考えなければなりません。
効果的な医療連携は歯科保健と歯科医療の両輪で成立するものでしょう。
元 北海道歯科医師会会長・日本歯科医師会副会長・日本顎咬合学会監事・前歯でも噛める入れ歯研究会会員 富野 晃先生による
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2007年北海道歯科医師会は、北海道国民健康保険の団体連合会の協力を得て、歯と全身の関わりを満70歳以上の
高齢者の歯・ロの現状と医科診療費との関連を調べ、その結果を2008年(平成20年)に報告書としてまとめました。
①現在歯数と医科診療費の関連
②欠損補綴状況との関連
③歯周病との関連
④北海道・口腔健康づくり8020推進条例はより道民の健康増進に寄与された。
⑤歯科口腔保健の推進に関する法律の成立(平成23年)

その他
⑥口腔ケア(歯科保健 )の目的と見過ごされている機能回復
⑦竹内 孝仁著 【ボケの8割は「水・便・メシ・運動」で治る】(健康新書081)認知症対策
◎1日1500Kcal・水1500CC以上を噛んで食べられる食事にすることが低栄養予防
⑧医療連携の基本は顔の見える関係でのチームワーク
◎「柏プロジェクト」での「顔の見える関係会議」
◎低栄養改善のための一つの指標は「指輪っかテスト」を提唱(東大 飯島 勝矢教授)
⑨「食べられる口に整える」ための基礎知識
山本 真樹監修【面白いほどわかる人体のしくみ】(H17・日本文芸社)
◎消化器とは
◎よく噛むことが健康への第一歩 ~歯は消化器官のスタート地点~
◎有名なファーレルの実験:咀嚼と消化(噛むことで消化と吸収の差を調査)
⑩厚労省が示す「歯科保健医療の需要と提供体制のイメージ」
歯科医療機関完結型の歯科保健医療は、少子高齢化の進展につれての自立度低下・全身疾患・加齢による口腔内変化などの
影響によって、否応なしに医科歯科連携の重要性が増す。2025年以降は、「地域完結型歯科保健医療」の提供体制へと変化する?
⑪まず噛める義歯にすること。これこそが医療連携のスタート!なぜなら、まず信用を得なければ、物事は進まない!
⑫先人は「咀嚼能力の評価」を強調した。その理屈を秋元 秀俊著【手仕事の医療ー評伝 石原寿郎ー】
(2019・平成29年)より一部抜粋する。

咀嚼能力の回復向上は、歯学終局の目的として挙げられるべきもので、ことに補綴学においては、
その重要性が昔より繰り返し強調されている。入れ歯を装着しておしまいではなく、噛めるところまで責任を持つ、
補綴処置にと・・・。
一部に学問的でないと批判する方がいるかもしれないが、リンゴ、タクアン、骨付きチキンが たべられることは正に実証です。


◆日本歯科大学 小林 義典教授の論文_______________________________________________
【咬合・咀嚼が創る健康長寿】日補綴誌・3巻3号:P189
~219(2011)
日本補綴学会として、日本学術会議咬合学研究連絡委員会での報告であり、今後の科学的根拠にもとずいた行政施行の実施への提言である。
【A】咀嚼の作用
① 口顎顔面頭蓋の成長発育の促進
② 消化作用と摂食機能調節作用
③ 唾液分泌の促進による健康の保全
④ 栄養素吸収の促進
⑤ 脳の活性化と脳の老化の抑
⑥ おいしさの増強と心理作用
⑦ 免疫機能の向上
⑧ 生体の恒常性とリズムの維持
⑨ 肥満による生活習慣病の抑制と改善
⑩ 運動機能の維持と向上
⑪ 嚥下の安全な誘発と遂行
⑫ 骨粗しょう症の抑制
⑬ 日常生活活動能力(ADL)と生活の質(QOL)
⑭ 疼痛の緩和
⑮ 家庭生活における学習場面の提供

【B】ガム咀嚼による食物咀嚼の作用の代替
【C】咀嚼と脳血管障害や摂食・嚥下障害などのリハビリ
【D】健康に必要な咀嚼の条件
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◆歯科の文献【口と身体の健康】



私たち歯科界はこれほどの膨大な基礎研究論文の存在を知りながら、「論語読みの論語知らず」では?

我々歯科医は、沢山の基礎研究の論文の内容を頭で理解するだけであって、それを臨床の場でどのように実践し、
その効果を国民に理解してもらうということが、残念ながら不足していると思います。
その点医科は、基礎研究と臨床医学がかなり調和しているのではないでしょうか。たとえば、何らかの原因で不幸にして
「足」を切断しても、義足で歩行を改善し、オリンピック選手の機能をも改善し、それを誰にでも知らしめられます。
「新しい外科手術」を実施しても、術後の明らかな生活の改善などをメディアを利用して示されることもあります。
作家の遠藤周作先生は産経新聞コラム(富野 晃先生 論文より引用)の中で、
「歯科の先生は、なぜ全身のことをやらないのですか?これから将来、全身との関わりを勉強することによって、
歯科を専門とする医者にならなくてはだめなのです。」
とおっしゃいました。
しかし、我々歯科界の高齢者の口腔機能の回復法は、「入れ歯」に限って言えば、その「作り方教室」が盛んだが、
それも自費治療のものが目立ちます。
それでは全ての国民に「噛める喜び」をもたらすことはできませんし広がりません。
東京医科歯科大学 水口 俊介教授は、「超高齢時代・・・短時間で的確に義歯補綴治療を行い、患者の口腔機能やQOLを
上昇させることが重要である・・・」
と述べられています。少なくとも、国立大学出身の国民の税金で修学された先生の
「作り方教室」では、まず国民にお礼の意をこめて、保険診療で誰もが受診して、その結果たくさんの論文で述べらているように、
患者さんの健康・生活の改善をもたらすような勉強会をスタートして、もう少し上手く具体的な表現で、
国民に歯科治療の効果を示す努力が求められるのではないかと思います。“保険診療”で論文道理の臨床結果を望みます。

巷では「8020運動」で、無歯顎患者はますます減少する。将来的には「総義歯」は無くなるとまで言われています。
たとえそんな夢のようなことが起こっても、「総義歯市場」は東南アジア(台湾・韓国・中国・インドネシシア・・・・・)に
まだまだ存在します。これから「総義歯患者さん」の爆発です。
日本の次世代の先生方は、その問題解決のリーダーになればと願っています。

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リマウントによる咬合調整は「エビデンスがない・・・」ちょいちょい耳にします。「前歯でも噛める入れ歯研究会」の
フードテストの臨床例は沢山報告されています。私たち研究会は、そのことが立派な「エビデンス」だと信じています。
しかし、その科学的根拠の「基礎論文」が見あたらないことが、その理由かな?とも思っています。
今回、九州大学口腔機能修復学 鮎川 保則教授指導のもと、鄭 継祥、他のReviewで、90年前のNeil(1932年)はじめ、
Lauritzen AG(1974年)・Gutowski A(1990年)・Badel T(2001年)・
Utiyama(2008年)、他69篇の論文が示されました。
歯科界のEBMとは?なんでしょうかね?日本の学者は北海道大学 内山 洋一教授だけです。従って、日本の歯科界では歴史的に
「話題性」が少なかったのかもしれません。アメリカでは、85%以上の大学で教育されていました。日本の補綴教科書にも形式的に
紹介されてますが、残念なことに、その技術的説明はなく、臨床教育の場ではまったく実践されていません。
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大切なことは、義歯で咬むと「患者さんの生活が改善するのではなく、
「リマウントによる咬合調整」によって、「咬合が安定」して患者さんの改善が見られるのです。


再度述べますが、「リマウントによる咬合調整法」は難しい技術ではありません。
従って、まず学校教育で導入していただき、歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士・一般医師・看護師・そして介護福祉士などの皆さんが
しっかり理解していただき、義歯の患者さんに「リマウントによる咬合調整した入れ歯は噛めるのだ」ということが広がれば、
高齢者の生活環境が大きく改善し、医療費減少にもつながるのではと思っています。

最後に、私の約10年以上にわたる保険診療における、患者さんの変化(臨床結果の改善)の一部を画像で紹介します。



今後、大阪府歯科医師協同組合員の皆様の、実践とご活躍に期待しております。